秘密の地図を描こう
36
セイランが何かをしているらしい。その事実はアスランもつかんでいた。
しかし、何をしているのか。詳しい内容まではわからない。
「……もう少し、俺が自由に使える人間がいれば、話は別なんだろうが……」
そうでなければ、軍部に無条件で協力をしてくれる――それもそれなりの立場の――の人間がいてくれればいいのに……と思わなくはない。
「今の俺では、な」
それは難しい、と言うこともわかっている。
だが、今のままではいけない。
おそらく、キラが帰ってこないのはそのせいだ。
「何ができる?」
いや、何をしなければいけない? と自分自身に問いかける。
しかし、いくら考えても答えが出ない。
だからといってあきらめる訳にはいかないのだ。
「……バルトフェルド隊長に相談に乗っていただくか……また」
困ったときばかり、彼を頼っているような気がする。しかし、自分が相談できる相手は彼らしかいないのだ。
だが、その前に自分でできることは何とかしなければいけないか。
そう考えたときだ。ドアがものすごい音とともに開かれる。
「あいつらは何を考えているんだ!」
同時にカガリが室内に踏み込んできた。いつものように彼女は怒りをあらわにしている。
「カガリ、落ち着け」
また何かあったのだろう。しかし、それを聞く前に彼女を落ち着かせないといけない。そう判断をして声をかける。
同時に、腰を上げるとドアを閉めるために足を踏み出す。
「そんなに頭に血が上がっていれば誰に足をすくわれるかわからないぞ」
まずは深呼吸をしろ、と具体的な指示を出した。
「……わかっている」
ドアにロックをかけると同時にカガリが口を開く。
「ただ、あいつらのやり方が気に入らないだけだ」
そう言うと同時に彼女は深いため息をついた。
「全く……オーブの理念をどう考えているんだ、あいつらは」
それだけではない、と彼女は続ける。
「あいつらは、キラを自分達の都合のいい人形にしたいらしい」
キラの才能を自分達のためだけに使わせたい、そう言っていた。
「そうなると、あいつが今、行方不明なのはいいことなのか?」
それとも、と彼女はため息をつく。
「そうだな。あいつがオーブにいない以上、あいつらでもうかつに手は出せない」
自分達も居場所を知らないから、連中が押しかけることも呼び出すことも不可能だ。
「それだけは幸いだな」
しかし、とカガリは言葉を重ねる。
「やはり、キラはオーブにいるべきだよな」
ハルマとカリダがどこか寂しげだし、何よりも自分が彼にそばにいてほしいと思っているから、と続けた。
「あぁ、お前だけで不満だと言っているわけではないぞ」
慌てたように彼女は言葉を吐き出す。
「ただ……キラとゆっくり話をする機会がなかったからな」
それが一番の心残りだ、と彼女は付け加える。
「そうだな」
この双子は、意外なところで似ているな……とアスランは思う。
キラも、よくそう言っていた。
「俺も、もう一度話をしたいよ、あいつと」
そうすれば、何かが変わるような気がする。そう付け加えた。